I LOVE 若冲。

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若冲プロフィール

近年、美術ファンの熱い注目を浴びている江戸中期の画家・伊藤若沖は、1716年に京都の商家に生まれ、23歳で家業を継いだ。商才もなく、無学無芸だった男だった彼は、やがて絵に目覚め、中国花鳥画の模写や動植物の写生などを通し、超絶的な画技を身につけていく。40歳になると、家督を弟に譲って早々と隠居し、画業に没頭。43歳から51歳の約10年をかけ、独創的な花鳥画の傑作「動植綵絵」30幅を描く。以降、1800年に85歳で亡くなるまで、水墨画、拓版画などで新しい技法に挑戦し、独創的な作品を生み続けた。ほか代表作に、「鹿苑寺大書院障壁画」「仙人掌群鶏図」などがある。

世界の歌姫(ディーバ)UTADAも魅了!?

浮かぶように佇む白象を、色とりどりの動物たちが取り囲む奇妙な楽園--2002年の宇多田ヒカルのPVに登場した摩訶不思議な絵。ポップな色彩や大胆な構図から現代画のように見えるが、驚くなかれ、これは江戸時代に若冲によって描かれた、極めて革新的なアートだったのだ。2000年秋、没後200年『若沖』展で作品が大公開されるや、「こんなスゴイ絵描きがいたのか!」と日本中にショックが走り、以降、某飲料水のパッケージに採用されるわ、雑誌で特集が組まれるわと、俄然注目を浴びるようになった若冲。だがそれまで、日本絵画史の枠組を大きく逸脱した個性が評価されにくく、多くの日本人は彼を忘れていた。そんな不遇時代まっただ中の1960年代、“裸の大将”こと放浪の画家・山下清はいち早く若冲を発見し、傑作『群鶏図』を模写している。ピュアなアーティストの魂は時代を超えて惹かれ合っていた!

青物問屋の旦那は、ひきこもり? 絵画オタ?

江戸中期、京の青物市場で仲介業を営む問屋の旦那が、突然姿を消した! 3000人もの青物売りが困り果て、挙げ句は、店の乗っ取り騒ぎにまで発展した一大スキャンダル。その主人公である、迷惑きわまりない失踪旦那こそが“若冲”なのだ。京都・錦小路の裕福な青物問屋の長男として生まれた若冲は、23歳で父親を亡くし、家業を継いだ。ところが、勉強嫌いで字もヘタ、三味線などの芸事もダメというイケてない男だったうえに、酒やオンナにまったく興味がなく、人づき合いも苦手。どう考えても旦那業に向く器ではない。そこで若冲、家業を放り出して丹波の山奥に引き籠もってしまったというのがスキャンダルの真相らしい。ちなみにこの“ひきこもり生活”は2年も続き、死亡説まで流れる騒ぎなったというから、関係各位の慌てっぷりは想像に難くない。家族や店の使用人は胃の痛い思いをしたことだろう。

コケコッコー!コケコッコー!!コケコッコー!!!

無趣味のカタブツだった若冲を、唯一夢中にさせたのが絵画。当時、画壇の中心にあった狩野派の絵師から基礎を習ううち、学問も芸事もダメだった男は覚醒した! まず、師匠である狩野派を超えたいとの大志を抱き、狩野派が手本としていた宋元(中国)画を1000点も模写。これで本場・中国の超絶テクニックをものにした若冲は、リスペクトする画人たちに倣い、直接“物”を写生したオリジナル作品に挑むことを決意する。さて、いったん火のついた男のやることはスゴイ。さっそく数十羽ものニワトリを飼い、庭に放して、ひたすら観察しては写生する暮らしを数年間も続けたという。しかし、ニワトリが数十羽とは! コケコッコーの大合唱に隣人がキレるご近所トラブルはなかったのだろうか? もっとも、クレームをつけてやろうと乗り込んだところで、ニワトリの群れを凝視する若冲のただならぬ殺気に、ビビって帰るしかないだろうが…。

スズメの恩返し!?

伊藤若冲は肉を一切口にしなかった。別にベジタリアンだからでも、ナチュラルライフにハマっていたわけでもない。まことに篤い仏教への信仰心から、動物の命を奪って食らうことが我慢ならなかったのだ。そんな若冲の動物愛護精神を語るエピソードがある。市場のとある店で数十羽のスズメが売られていた。ペットショップならまだよかったが、そこは食料品店。焼き鳥にされるか、吸い物の具にされるか…スズメたちの非業の最期は決まったようなものだ。これを哀れに思った若冲は、すぐさまその数十羽を買い取り、庭に放してやったというのだ。「若冲さん、ありがとう!」と大空に飛び立ったスズメは、その後、美しい娘の姿で若冲の前に現れ…なんて恩返し美談はもちろんないが、若冲の絵の中でイキイキと躍動する動物たちを見ていると、彼は動物と心を通わせることができたのかも、なんて思ってしまう。

じつは禁じ手!水墨画イリュージョン

墨でボンヤリと描かれた楕円形。墨が乾けばビックリ。なかったはずの白い線が浮かび上がり、ギッチリ詰まった花びらが細かく描かれた“菊の花”だったことがわかる。これは伊藤若冲お得意のスーパーテクニック“筋目描き”による水墨画イリュージョン。にじみやすい画箋紙に墨を垂らすと、にじみ同士がぶつかった箇所が白い筋として残るハプニング的効果を利用しているのだ。じつはこれ、日本画壇のエリート集団・狩野派などは意地でも使わない邪道中の邪道。だが我らが若冲は「だっておもしろいんだもーん」と言わんばかりにあえて多用した。ほかにも、デジタル画を先取りしたかのような“枡目描き”、当時はまだ珍しかったカラフルな多色版画などなど、若冲はおもちゃに夢中になる子どもみたいな底なしのエネルギーで「おもしろそう」&「他人が見たらビックリしそう」なテクに次々と食いつていったのだ。