【特集】「毎日が地獄のよう」権力者による性犯罪と被害者の苦悩…訴えを阻むのは

【特集】「毎日が地獄のよう」権力者による性犯罪と被害者の苦悩…訴えを阻むのは

権力者による性犯罪の問題。加害者が組織で被害者の優位に立つ場合、被害者は事件そのものの被害だけでなく、組織内での口止めなどにも立ち向かわなければなりません。大阪地検元トップの性的暴行事件と高校の部活動にまつわる事件。それぞれの被害者が抱える深い苦悩に迫りました。

◆高校水泳部の性犯罪(1):外部コーチの権力乱用◆

大阪府内の私立高校に通う男子生徒、Aさんが記した20ページに及ぶ手書きの文章。
その中には所属する水泳部で受けた性被害についての生々しい様子が記されています。

【Aさんの手記】「突然、加害者が僕のズボンの上から触ってきたのです。加害者はそのままパンツの中にまで手を入れて、5分くらい触ると、満足したのか手を放しました」

加害者は水泳部で外部コーチをしていた男。事件が起きたのは、Aさんが別の水泳部員と2人でコーチの自宅に泊まりに行った時でした。Aさんが寝た素振りを見せるとコーチが局部を触るわいせつな行為をしてきたといいます。背景には部活内での外部コーチの強い立場がありました。

【Aさんの父親】「コーチである加害者が全権を握っていたというのがある。(自宅に)呼ばれるのがステータスと思っている方もいる」

【Aさんの手記】「何も考えられないくらい、パニックになっていた。目を開けて抵抗したとしても、さらにそれから何をされるのだろうといった恐怖心でいっぱいでした」

その後、警察に被害を申告。男は強制わいせつの罪で起訴され大阪地裁堺支部で懲役2年6か月、執行猶予4年の有罪判決が言い渡されました。裁判ではコーチがAさんに睡眠薬を服用させていたことが判明。さらに、コーチが保存していた画像から性犯罪の常習性も指摘されました。

◆高校水泳部の性犯罪(2):深刻な二次被害◆

Aさんは事件後PTSD=心的外傷後ストレス障害を発症し、授業や部活に参加できない日々が続きました。事情を知らない部員たちからは「迷惑をかけすぎ」などの誹謗中傷を受け、二次被害にも悩まされたといいます。

【Aさんの父親】「学校では事件があったことを公表しない、(息子は被害について)自分から言わないように言われていたので、学校に行ってもほかの子が楽しんでいるにもかかわらず、自分は全然楽しめない。孤独を感じてしまっている」

Aさんとと両親は学校の対応に不満を募らせています。事件があった高校の校長がテレビ大阪の取材に応じました。事件の公表をしない理由については。

【学校長】「もちろん被害者の心情や思いは理解できるが、余罪の部分というか、ほかにも被害を受けた可能性がある生徒がいるということ。その生徒も学校としては守るべき、被害にあった生徒も守るべき。公表しない理由はそこに尽きる」

◆性加害は社会の治安維持を担う検察庁でも:女性検事の証言◆

【被害を受けた女性検事(Bさん)】「すごい強い恐怖なんですよね、抵抗したら殺されるって思いますから。せめて殺されたくない、生きて帰りたいって思うんです」

大阪地検のトップ、検事正だった北川健太郎被告が準強制性交等の罪に問われている事件。検察の冒頭陳述によりますと、泥酔した女性検事を北川被告が自宅に連れ込み、性的暴行を加えたといいます。被害を訴える女性検事Bさんがテレビ大阪の取材に応じ、苦しみ続けている6年間を明かしました。

【Bさん】「強く抵抗したらどうなるんですか。助けてもらえる保証があるんですか。すごい強い恐怖なんですよね。もうそれだけで殺されているようなもの」

家族や職場に被害を知られたくないという思いから、事件直後は被害申告ができず。さらに事件から1年後に退職した北川被告から、事件の口止めを目的とした直筆の手紙が届きました。

【北川被告からの手紙の内容】「この被害を表ざたにすれば私は絶対に生きていくことはできず、自死するほかないと決意している。(元検事正によるスキャンダルで)組織は強烈な批判を受け、組織として立ち行かなくなるので私の命に代えてやめていただきたい」

【Bさん】「検察組織や、まじめに頑張っている職員にも迷惑がかかるんだって思いこまされてしまった。さらに検事総長以下も辞職に追い込まれるとかも書いてあって、そんな恐ろしい事態になると思ったら、怖くて処罰を求めるってこと言えなくなって。(北川被告は)絶対権力者です。被告人に逆らえる人は当時誰もいなかったと思う」
圧力により、Bさんは5年以上被害を公にできませんでした。

◆専門家の指摘:被害者が声を上げられない社会◆

犯罪の被害者支援に取り組む日本フォレンジックヒューマンケアセンターの長江美代子副会長は、二次被害への懸念と社会の風潮が被害者の泣き寝入りにつながると指摘します。
「(告発して)会社の中で信じてもらえなかったり、居づらくなったりしたら自分が仕事を失ってしまうかもしれない、組織内で穏便に抑えようと当事者も周りも思う」

◆検察組織の問題:権力者の不適切行為を許す土壌◆

2024年10月の初公判で起訴内容を認め、謝罪した北川被告。しかしその2か月後、一転して無罪を主張することを明らかにしたのです。

【北川被告の弁護人】「被害者とされている女性が抗拒不能であったことについて合理的な疑いがあると考えます。また北川さんには事件当時、女性が抗拒不能であったという認識はなく、女性の同意があったと思っていたため犯罪の故意がありません。したがって無罪と」

事件後主張を二転三転させてきた北川被告。Bさんは今回の事件について検察組織にも責任があると考えています。

【女性検事Bさん】「権力を持って様々な不適切なことを許されてきたというか、みんなが声を上げられなくて見逃されてきた。北川自身が『自分が何をやっても誰も訴え出れない』という風に確信をもってこういう事件を起こしたと思っているので、検察組織の土壌が彼をつくり上げたところは絶対にある。二度とこういうことが起きないようにする、という検証と再発防止策を立てないといけない」

初公判以降Bさんの支援団体が発足し、適正な捜査などを求めた5万8000に上る署名が集まっています。

【Bさん】「私が言いたくない被害を公にすることで、性犯罪被害がいかにひどいのかを知って頂いて、社会が正しく関心を持って性犯罪の撲滅のために声を上げていってほしい」

◆被害者支援の重要性:社会全体での取り組み◆

性犯罪の被害者が声を上げやすい環境を整えることが求められています。内閣府の調査によると、不同意性交の被害にあった人のうち、55%が被害をどこにも相談していないといいます。被害者が安心して相談できる体制や、社会全体での意識改革が必要です。

≪性犯罪被害者のための支援窓口≫
犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターでは、全国共通短縮ダイヤル「#8891(はやくワンストップ)」で相談を受け付けています。被害に遭われた方は、一人で悩まず、専門の支援機関に相談してください。

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