ふんわりしたタオルや、金属のつるっとした表面を何かの装置でなぞっています。実はこれ、人間が物に触れ感じる「手触り感」を「見える化」する研究です。グラフの黄色の波形が肌の表面の形状、赤色が摩擦の力を表しています。化粧水を塗って肌触りが変わると、どうなるのでしょうか。
【アナウンサー】
「しっとりして、肌に浸透していく感じがしますね」
この“しっとり”で、グラフに変化は・・・
【アナウンサー】
「ちょっとグラフの形が違いますね」
【香川大学・高尾教授】
「摩擦もさっきはもう少しとげとげしていたんですけど、滑らかな感じに。指先に対する刺激がとても減ってくるとここから読み取ることができます。」
なぜそんなことができるのか。装置の先端に秘密がー
【香川大学・高尾教授】
「人間の指先を模倣して作った半導体のセンサーになります」
「指先を模倣」??センサーの構造にはある秘密がーこの、0.5ミリ間隔の、先端の突起部分が、
実は、人の「指紋」を再現。モノをなぞると、この“指紋”に伝わった刺激が内部のバネに伝わり数値化される仕組みです。
【香川大学・高尾教授】
「指が感じとっている空間の細かさというのは、実は今までのセンサーでは取れない領域なんですね。今までと全く発想を変えました。私たちの指先がやっていることと同じようなことをこのセンサーで実現しようとー」
世界初と言われるこの技術に企業も注目。スキンケア、衛生用品大手などと共同研究が進んでいます。そしてこの会社も!ここは、家電商品の開発・製造拠点です。その一室で行われていたのは・・・
女性社員 「重く柔らかい毛髪いきます<計測サンプル抽出>」
「髪の毛1本」をあのセンサーで計測していました。グラフには髪の表面の形状と、触れたときに生じる摩擦の力のデータ。それをもとに「髪の手触り感」を研究しています。
この部門が手掛けているのが、国内トップシェアのドライヤー。髪質の研究を重ね、商品を開発してきました。しかし、しっとり、さらさらなどの手触りの評価は、人の感覚頼みでした。
そんな中、いま力を入れるのがこの研究。人の感覚を裏付けるデータで顧客の潜在ニーズに迫ります。お客様の求めていること。その本当の思いというところは、
【パナソニック担当者】
「なかなかつかみづらいところもあります。ですが、定量化することによって私たちにも理解できる。そして活用の場は、人の手が触れないところまで・・・先ほどの香川大学の研究チームが医学部を訪ねていました」
これは、内視鏡でがんの進行度合いを見極める実験。重要な判断材料は「臓器の硬さ」で、医師はその“微妙な感触の違い”を手に持つ器材越しに感じ取りますが・・・
【香川大学 小原英幹講師】
「主観的判断なのでどうしても、熟練の先生と若い先生とで判断が異なってくるんですよね」
そこで、内視鏡に触覚センサーを付けることで“誰でも同じ診断”ができるようにならないか、研究を始めています。さらに・・・
【日経新聞 竹内記者】
国の研究プロジェクトにも採択されるこのセンシング技術。人工知能のパフォーマンス向上に必要不可欠な質の高い学習用データを生み出すことからも大きな期待が寄せられています。
【高尾教授】
センサーの性能をどんどんどんどん高めていくということと、
同時にそこから得られる情報から脳(人工知能)もどんどんどんどん鍛えて・・・人間の力だけでは出来なかったようなことが出来る。