第129回「 新疆ウイグルのムカーム<3> 」
~現在~
2011年3月17日(木)放送
ウイグルの伝統では、男の子は7歳になると、ムカームの演奏を学ぶ。例外はまずない。カティムチャン少年は、この日、初めて自分の楽器を手に入れる。ムカームで使用される楽器は、弦楽器、打楽器など、20種類以上。少年が手にしたのは「サタール」。ムカームの代表的な楽器だ。東洋と西洋の弦楽器の要素が融合している。
第128回「 新疆ウイグルのムカーム <2> 」
~12ムカーム~
2011年3月10日(木)放送
10世紀ごろに成立したとされるムカームは、長らく庶民の娯楽であったが、それはやがて、宮廷でも奏でられる、高尚な芸術へと昇華していった。16世紀に天山山脈南部のタリム盆地一帯支配した、ヤルカンド・ハン国の王妃であったアマンニサ・ハンが、宮廷音楽師と共に、民間のムカームを集めて整理し、「12ムカーム」を体系化したのである。それは、12の組曲からなり、すべて演奏すると一日かかると言われる。
第127回「 新疆ウイグルのムカーム <1> 」
~総論~
2011年3月3日(木)放送
その旋律は、砂の海を吹き抜ける、一陣の風。乾いた大地に潤いを与えるがごとく、人々の心に染み渡る。砂とオアシスに暮らす民は、千年の昔から、この旋律に乗せて歌い、このリズムに合わせて踊り、それぞれの人生を謳歌してきた。それは、歌と舞踊が織りなす、魂の叫び。無形文化遺産「新疆ウイグルのムカーム」である。
第126回「 泰山 <4> 」
~現在~
2011年2月24日(木)放送
皇帝たちが敬った聖なる山、泰山は、この1000年の間に、庶民が信仰する山へと変化した。特に人々の信仰が篤いのは、泰山の道教の神の妹とされる、「碧霞元君」という道教の女神である。泰山の近くに住む、李福芳さんの家には、碧霞元君を奉る部屋がある。彼女はこの日、豪華な供え物を用意した。碧霞元君の誕生日を明日に控えていたからである。祝いの日。門の前で香を焚いて、近隣の人々に参詣に行く旨を知らせる。泰山の頂へ続く石段を一歩ごとに一拝しながら登り、何と3時間もかけて、碧霞元君を祀る祠へ。李さんが祈るのは、ごく平凡な、家族の幸せである。かつて皇帝が天と対話した泰山は、今、人々が神と交流する場となっている。
第125回「 泰山 <3> 」
~泰山の神々~
2011年2月17日(木)放送
泰山で執り行われた、皇帝が天を祀る儀式が「封禅」である。しかし、西暦1008年に北宋の3代皇帝・真宗が行った封禅を最後に、泰山は帝王の山から、庶民たちの山へと変化していった。泰山には不思議なことに、複数の宗教の寺院が混在している。孔子を祀った孔子廟や、道教の最高神、「玉皇大帝」を祀った廟、仏教の観世音菩薩を祀ったものもある。さらに泰山の岩肌には、2000平方メートルにわたって経文が彫られた、広大な摩崖石刻もある。神々しくそびえる泰山は、今や、様々な教えを信じる、庶民が敬う山となっているのである。
第124回「 泰山 <2> 」
~封禅~
2011年2月10日(木)放送
泰山は神話の時代から、天に通じる祭祀の場所であった。この泰山で、皇帝たちが執り行った儀式が、「封禅」である。かの秦の始皇帝も、紀元前219年に、封禅を行った。始皇帝は、山頂に自ら土を盛って天を祀り、麓では土を掘ってならし、天と地への敬意を表したという。始皇帝は、この封禅により、その権力が天より授かったものであることを、天下万民に知らしめた。これ以後、泰山は、皇帝だけが祀ることのできる、帝王の山となったのである。
第123回「 泰山 <1> 」
~総論~
2011年2月3日(木)放送
その世界遺産は、歴代の皇帝たちが敬った、天に通じる聖なる山。あまたの覇者たちが、ここで祭祀を行い、天からの命を授かった。そして今ここは、庶民たちが、ささやかな幸せを願って祈りをささげる場所。多くの人が、この山を天と地が交わる場所と信じている。中国で最も東にある神聖な山であり、日の出を最初に迎える場所、命が生まれ育つ場所と、古くから信じられてきた。世界複合遺産、「泰山」である。
第122回「 古琴<4> 」
~流水~
2011年1月27日(木)放送
3000年の昔から連綿と受け継がれてきた古琴の伝統はなんと、現代の科学の力で宇宙へと続いていくこととなる。伯牙が作曲したとされる「流水」という曲は、その誕生から数千年のちの1977年、NASAの惑星探査機ボイジャーにデータ化して収められ、宇宙へと旅立った。いつの日か「流水」を異星人が聴いて、その心を揺さぶられる日がくるのだろう。
第121回「 古琴 <3> 」
~知音~
2011年1月20日(木)放送
「知音」という言葉は、古琴にまつわる故事に由来する。春秋時代、伯牙という琴の名手がいた。ある日、伯牙が山中で琴を奏でていたところ、鐘子期という名の一人の男がやってきた。鐘子期は、琴の音色を聞き、伯牙が演奏に込めた境地を次々と言い当てた。その瞬間、2人は無二の親友となったのだ。しかし、鐘子期は若くしてこの世を去ってしまう。悲しんだ伯牙は最後に彼と出会ったときの曲を演奏した後、琴を壊し、その後二度と琴を弾くことはなかったという。
第120回「 古琴 <2> 」
~音色~
2011年1月13日(木)放送
琴は、中国の伝統文化である、琴、囲碁、書、水墨画の四芸の中で、最も位の高い芸とされている。古琴は主に3つの奏法により旋律を奏でる。「散音」は開放弦。「按音」は左手で弦を押さえて右手ではじく。「泛音」は軽く弦を押さえて倍音を奏でる、いわゆるハーモニクスである。さらに、押さえた弦を滑らせる、スライド奏法も用いられる。