第179回「 莫高窟 <6> 」
~封印された窟~
2012年3月1日(木)放送
その世界遺産は500年以上にわたり、人々の忘却の彼方に置かれ、世界に知られることはなかった。20世紀初頭、その遺産の扉が一人の探検家によって開かれる。イギリス国籍のハンガリー人、オーレル・スタインである。1907年、スタインはこの地を守っていた住持・王円籙とともに、封印されていた窟に足を踏み入れた。それ以後、世界はこの地にあった遺産の計り知れない価値を知ることになる。物語の続きを始めよう。世界文化遺産「莫高窟」。
第178回「 天壇 <8> 」
~七星石の謎~
2012年2月23日(木)放送
16世紀、嘉靖帝は、いまの祈年殿の東南に、風水に従って石を置いた。「七星石」である。7つの石を置いたのには理由がある。かつて皇帝たちは帝位につく際、天と地を祀る、「封禅」の儀式を行った。最初に封禅を行った秦の始皇帝も、霊山として知られる、泰山で儀式を執り行った。しかし泰山は遠く、儀式には費用もかかるため、11世紀以降、封禅は行われなくなった。7つの石は、その泰山の7つの峰を表している。しかもそれぞれの石が、泰山に似せて彫刻されているのである。ところが現在の七星石は、なんと8つある。これはどうしたことか。
第177回「 天壇 <7> 」
~圜丘と皇穹宇~
2012年2月16日(木)放送
16世紀半ば、明の12代皇帝・嘉靖帝は、永楽帝が作った「天地壇」を改め、「天壇」とした。その際に作らせたのが、圜丘と皇穹宇である。圜丘は三層の円形の石台からなり、最上層は直径9丈。中心に置かれた円形の石から周囲にむけ、9枚の石が扇形に敷かれ、その外側の石も、それぞれ9の倍数となっている。9は中国で最も尊い「皇帝の数字」。以後、歴代の皇帝は、ここで天を祭る儀式を行った。その祭られる天帝と、歴代皇帝の位牌を安置する建物が、「皇穹宇」である。
第176回「 天壇 <6> 」
~祈年殿の秘密~
2012年2月9日(木)放送
故宮と並ぶ北京のシンボル、世界文化遺産「天壇」。中でも目を引く建物が、三層の屋根と、青い瑠璃瓦が特徴的な、「祈年殿」である。この建築をデザインしたのは、紫禁城の造営にも携わった、「様式雷」一族。内部は梁やケタを用いず、クスノキの柱と、角材や丸木の組み合わせだけで、屋根を支えている。殿内にある28本の太いクスノキの柱は、それぞれに意味があり、季節や節句、星座などを表しているという。
第175回「 天壇 <5> 」
~天を祭る場所~
2012年2月2日(木)放送
天安門や紫禁城と並ぶ北京のシンボル、「祈年殿」。青い瓦を葺いた円形の木造建築である。古来、中国では、「天は円く、地は四角い」とされてきた。歴代皇帝は、ここで天を祭り、五穀豊穣を祈った。物語の続きを始めよう。世界文化遺産「天壇」。
第174回「 蘇州古典園林 <8> 」
~山と水~
2012年1月26日(木)放送
文人たちがそれぞれに工夫を凝らした庭園は、山水の美を凝縮させた、まさに中国建築の粋である。18世紀に作られた「環秀山荘」。この庭園に設けられた巨大な築山には、断崖絶壁、洞窟、渓谷といった自然の山の特徴がふんだんに盛り込まれている。歩みを進めるに従い、景色は変化し、実際に大自然の中に身を置いている錯覚に陥る。数ある築山の中でも傑作中の傑作である。
第173回「 蘇州古典園林 <7> 」
~獅子林~
2012年1月19日(木)放送
都を去った文人たちが作り上げた楽園、「蘇州古典園林」。その中に、禅僧が作ったという異色の庭園がある。14世紀、元王朝の時代に作られた「獅子林」である。目を引くのは何といっても、奇妙な形をした岩の数々。これらは蘇州にある湖「太湖」で採取された石灰岩で、湖の波に洗われ、非常に長い年月かけて、このような不思議な形がつくられた。釈迦が説法する様は、「獅子が吼える」と表現された。獅子林の名はそこに由来する。
第172回「 蘇州古典園林 <6> 」
~留園~
2012年1月12日(木)放送
多くの文人たちがそこに暮らすことを夢見た、世界文化遺産「蘇州古典園林」。中国四大名園と呼ばれる庭園とは、皇帝が作った、北京の頤和園、承徳の避暑山荘。そして蘇州にある2つの庭園、「拙政園」と「留園」である。園内は4つの区画に分かれ、それぞれは回廊で隔てられている。自然の起伏にそって、なだらかに高低を繰り返す回廊。そこを歩けば、庭園内にいながらにして、雄大なる山水の美を堪能することができる。
第171回「 蘇州古典園林 <5> 」
~東洋のベニス~
2012年1月5日(木)放送
かつて「江浙熟すれば天下足る」とまで言われた肥沃な土地、蘇州。その世界遺産は、そんな豊かな土地に抱かれてきた。かのマルコ・ポーロが、「東洋のベニス」と呼んだ、水の都。最盛期には500以上の庭園が造成され、そのうち、世界遺産に登録された庭園は9つを数える。物語の続きを始めよう。世界文化遺産「蘇州古典園林」。
第170回「 万里の長城 <10> 」
~失われゆく長城~
2011年12月29日(木)放送
現存するレンガ造りの長城の多くは、明の時代に作られたものである。明を滅ぼした清王朝は、長城に頼ることなく、外交の力で北方の脅威に対抗した。清王朝以降、長城はほとんど手入れされることなく、しだいに荒れ果てて行った。長城に接する村では、古くから長城のレンガなどが、家の壁に使われている。