第219回「 廬山 <5> 」
~『大地』~
2012年12月6日(木)放送
山中にひっそりと佇む、キリスト教の教会。1910年に建てられた「耶蘇昇天教堂」である。この教会の最初の主は、賽兆祥という中国名を持つ、アメリカ人宣教師だった。その娘、賽珍珠は、のちに、偉大な小説家として世界にその名を轟かせる。この山は、中国の文人たちが愛し、そして、多くの西洋人が別荘を建て、夏を過ごした場所。物語の続きを始めよう。世界文化遺産、「廬山」。
第218回「 古都平遥 <5> 」
~平遥に残る建築~
2012年11月29日(木)放送
古の街並みが残る、タイムカプセルのごとき街。世界文化遺産「古都平遥」。14世紀以降の、明・清王朝時代の建築が多く残されているが、それよりさらに古い建築も、奇跡的な保存状態で残されている。1400年前の隋の時代に創建されたと伝わる、双林寺。双林とは沙羅双樹のことで、釈迦は双林の下で、北を頭にして入滅したとされる。双林寺の名はそれにちなんだものだ。
第217回「 古都平遥 <4> 」
~孔子の教え~
2012年11月22日(木)放送
「晋商」と呼ばれた山西商人を多く排出したこの街では、孔子が唱えた義や徳という価値観が商人の間で大切にされてきた。街の東西の城壁の上に、魁星楼という名の建物が建っている。魁星とは北斗七星の第一星のことで、科挙の合否を司る星だという。その魁星楼の下に、孔子を祀る「文廟」がある。その「大成殿」は中国に現存する最古の孔子廟である。記録によれば建てられたのは1163年、宋の時代だ。
第216回「 古都平遥 <3> 」
~日昇昌の秘話~
2012年11月15日(木)放送
平遙の街は19世紀、一躍、中国の金融の中心地となる。この地の商人・雷履泰が考案した為替のシステム、「匯票」により、貨幣流通が飛躍的に増加したからである。その舞台となったのは「票号」と呼ばれた、銀行のような金融機関である。雷履泰が起こした中国最初の票号「日昇昌」は、全国に35の支店を設けるまでに成長し、 やがて清王朝の為替業務まで取り仕切るようになった。
第215回「 古都平遥 <2> 」
~平遥発展の謎~
2012年11月8日(木)放送
今なお、昔のままの街並みが残る、世界文化遺産、古都平遥。ここでは民家や商家に至るまで、伝統建築のまま残されている。一体なぜなのか。その謎を解くには平遙の歴史を紐解かなければならない。平遙は痩せた土地であったが、交通の要衝だったことから、中国の広い地域で活躍する商人を輩出した。そんな商人の一人が、この平遙の歴史を変えた。19世紀の人物、雷履泰(らいりたい)。彼が中国にもたらしたのは、金融革命だった。
第214回「 古都平遥 <1> 」
~総論~
2012年11月1日(木)放送
その世界遺産は、街全体が、まるでタイムカプセル。中国の近代化の影響をほとんど受けないまま、いにしえの姿を保っている。千年以上の歴史を誇る寺院…。中国最古の孔子廟…。完璧に残された明時代の城壁…。そして、栄華を誇った商人たちの夢の跡… 世界文化遺産「古都平遥」
第213回「 武夷山 <8> 」
~武夷山を敬う人々~
2012年10月25日(木)放送
この地が自然遺産ではなく、複合遺産とされているのは、かつて栄えた古代王朝の遺跡が残されていることと、朱子学の創始者・朱熹らに代表される、文人や宗教家たちの縁の地でもあるためである。12世紀に朱熹が活躍する遥か以前から、武夷山には様々な信仰が根を下ろしていた。この「桃源洞」は、道教の寺院である。道家たちはここを理想の修行の場と定め、10世紀の終わり頃には、道教の聖地の一つとなった。
第212回「 武夷山 <7> 」
~昆虫の楽園~
2012年10月18日(木)放送
植物の宝庫、そして動物の楽園としても知られる、世界複合遺産「武夷山」。氷河期をくぐり抜けた動植物の子孫たちが今も息づいている。世界から特に注目されているのは昆虫である。シナテングアゲハは、世界全体でも標本が20ほどしかないという、極めて希少な蝶である。パンダやキンシコウと並び、第一級保護動物に指定されている。世界中に存在する昆虫は34目だが、武夷山には何と、そのうちの31目が生息し、種類は4635種にのぼる。この他にも、15000種の昆虫が未調査のままだという。
第211回「 武夷山 <6> 」
~植物の宝庫~
2012年10月11日(木)放送
朱子学の祖、朱熹が生涯を過ごした絶景の地、世界複合遺産「武夷山」。その独特の地形により、この周辺地域には多種多様な動植物が生息している。世界の武夷山と同じ緯度の地域はほとんどが砂漠地帯だが、ここには中亜熱帯原生林が広がっている。そしてその生態系は、海抜が上がるに従い、様々に変化していく。特に目をみはるのは、海抜600メートル以上の場所に生えている、「南方紅豆杉(なんぽうこうとうすぎ)」。その枝と葉から非常に高価な薬品を製造することができ、第一級国家保護植物に指定されている。
第210回「 武夷山 <6> 」
~九曲渓と朱熹~
2012年10月4日(木)放送
1193年のある日、高名な2人の文人が竹の筏に乗って渓流の船旅を楽しんだ。一人は朱子学の祖である朱熹。もう一人は詩人の辛棄疾(しんきしつ)である。九曲渓と呼ばれるその川で、朱熹は10首の漢詩を詠んだ。それはこんにち、両岸の岩に刻まれている。朱熹がその生涯のほとんどを過ごしたこの地は、自然遺産と文化遺産が共存する、中国屈指の景勝地でもある。ものがたりの続きを始めよう。世界複合遺産、「武夷山」。