2020年11月2日(月)『出身地はどこですか?』


大阪市を廃止して特別区を設置するか、否かを問ういわゆる「大阪都構想」の住民投票が11月1日に実施され
約1万7千票という僅差で、再び反対多数となりました。

昨夜の会見で、都構想を推進してきた大阪維新の会の松井一郎代表は
「変わる事への市民の不安を解消する説得ができなかった」と述べていました。

今回の住民投票では、この「不安解消」にいかに応えることができるのかが、大きなポイントでした。

私は、土曜日曜の2日間で、それほど多くはありませんが50人くらいの大阪市民の方々に話を伺いました。

その中で、「年代(世代)」と「生活環境」の違いは千差万別で、
この違った環境の方々が、二者択一で、かつ後戻りできないという条件つきで決断しなければならないことに、壮大な難しさを痛感しました。

10代、20代の方々に伺うと、まず返ってくる答えが、
住所が変わるのが「嫌だから」「面倒だから・・・」でした。

特別区に移行した場合の住民票や運転免許証などの住所表記は
自動的に変更されますから、手続き上はそれほど不便は生じないと思います。

しかし、若い方々の「嫌」ということの本質は、手続き論ではないのです。
なんとなく・・・という方が多かったのですが。まさに、ヒントはそこにあるのではと思います。

私の場合、「出身地」はどこですか?と問われると。
渡辺)大阪です。質問)大阪のどこですか?渡辺)八尾です・・・
この場合の大阪は「府」を指します。

ところが、前述(10月30日更新)した「本籍」の場合だと、
渡辺)大阪です。質問)大阪のどこですか?渡辺)西区です・・・
一見、同じよう見えますが、この場合の大阪は「市」を指しています。

特別区に移行した場合、
大阪市の方々が使う大阪という言葉は、大阪府を示すことになり、大きな違いがあるのではないでしょうか。

ほかの政令都市で仮定すると、もう少しわかりやすいでしょう。
名古屋市民の場合、愛知です・・・
神戸市市民の場合、兵庫です・・・
という具合に、市の名称と、県名が異なる場合は、さらなる違和感を抱えるわけです。

行政サービスなどのメリット、デメリットはある程度お金に換算したりできるので判断しやすいのですが、
地名変更の場合は、あくまで心理によるところが大きく、数値的に表現できない分、
すぐに判断がつかなくなるのだと思います。

参考までに、日本人の名字は、地名に由来するものがいくつもあります。
宮城さん、福井さん、千葉さん、長野さん、石川さん、福井さん、大阪さん・・・と
府県名と同じ名字の方がたくさんいらっしゃいます。

伊勢(三重)の藤原さんが、伊藤さんに。
加賀(石川)の藤原さんが、加藤さんになったという由来もあるくらい、地名と名字の関連は深いのです。

地名はその人そのもの、すなわちアイデンティティとも言えそうです。
今回の住民投票は、240万人の方々のアイデンティティに、大きな問いかけをしたことになります。

多くの有権者の方々が、答えを導き出すのに時間を要したこともうなずけます。

11月1日の住民投票の開票速報は、
テレビ大阪のYouTube公式チャンネル「大阪人の選択 住民投票開票LIVE」でご覧いただけます。