2018年12月25日(火)『(年の瀬に)災害考〜生活の知恵〜』

今年を振り返ると色々ありすぎて・・・。
中でも地震や台風・豪雨による自然災害が頻発した年でもありました。

私は平成2年に社会人になりました。
30年弱の間に、雲仙普賢岳、阪神大震災、東日本大震災などの取材に関わりました。
その時いつも感じたのは、「こんな経験初めてなのでは?」。

しかしもっと長いスパン(月日)で俯瞰すると、同じスケール、もしくはそれ以上の大きな災害に見舞われていることも忘れてはなりません。
そのたびに人類は飽くなき努力・工夫をしていることを。

来年2019年は伊勢湾台風から60年だそうです。
伊勢湾台風、現在52歳の私が、子どものころに親からよく聞いた名称です。
そういえば、子どものころは台風が来る前、必ず雨戸を閉める係りがわが家では私と弟。
男の子の仕事でした(最近はマンション住まいが増え、雨戸の存在を知らない世代も増えていますが)。

今年の8月下旬、三重県の伊賀市内の田んぼの風景がこちら。


9月に入ったら十分刈り取りができそうなくらい、たわわに実っていました。

同じ日に、同じ三重県の鈴鹿市内の田んぼを見て。
??


すでに、刈り取られたあとでした!
同じ県内なのに、なぜ?

その訳は、乗り合わせたタクシーの運転手さんが教えてくれました。
「このあたりは、お盆前に刈り取りは終わってるよ。」
「ずいぶん早いんですね・・・」

鈴鹿市など伊勢湾の沿岸地域は、1959年の伊勢湾台風で甚大な被害を受けました。
運転手さんは、伊勢湾台風の経験者でした。
「ひどかったね。コメは全滅。台風の後は道に牛がばたばた倒れていて・・・」

モータリゼーションの波が押し寄せる前、日本でも牛や馬が農耕には欠かせない時代だったようです。
いまでは想像がつきませんが、家畜のいる生活が身近にあったんですね。

この悲しい経験から、この地域では稲の収穫時期を大幅に早めたそうです。
(私の記憶ですと、大阪の平野部では昔は10月に入ってから刈り取っていたような気がします)
台風が来る前の8月上旬、すなわちお盆前に刈り取りを済ませています。
結果、鈴鹿市内は三重県内でも特に早くなったとのこと。
そうか、生活の知恵!と、簡単に納得したいところですが。

この時期に刈り取りとなると、相当な苦労が生まれます。
考えてみたら、8月上旬といえばセミ時雨まっさかりの真夏。かなり過酷な作業と推察いたします。

さらに、田植えも早めなければいけません。
4月の上旬の田植え。機械化が進んでいるとはいえ、まだまだ水が冷たい時期だそうです。

それでも台風は避けたい・・・。
生産者の方々の体を張っての作業のおかげでは育まれる稲。
この上なく愛おしく思います。

年々、真夏の台風も増えています。
それでも人は知恵と工夫、そしてたゆまぬ努力の末に歩みを進める・・・。

災害は、決して失うばかりでない、ということを知らされました。