シリーズ13億人の深層 第3章
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2009 年 8 月 14 日

8月ロケ5日目:1年の成果がたったこれだけ?

今日は旧暦6月24日、火把節の日です。
朝、今日も小雨。夜には西昌市30周年の大イベントがあるので午前中から大石頭村へ。
到着すると、村の女性たちが籠にじゃがいもを入れて集まっていました。レブジホさんもいます。この日は西昌から業者がじゃがいもの買い付けにやってくるとのことで、皆待っている状態です。各家から次々とじゃがいもが運ばれてきます。一籠で重さは約65キロ。長女が遠く離れた小学校に行き、ご主人が出稼ぎでいないレブジホさんは体がよくないにもかかわらず一人で5籠も運んできました。

籠にいっぱいのじゃがいもを運んでくるレブジホさん(一籠 約65Kg)

籠にいっぱいのじゃがいもを運んでくるレブジホさん(一籠 約65Kg)

大きくて形のいいじゃがいもは売って、残りは自分で食べるか家畜のエサにします。彼女の家ではじゃがいもと、蕎麦しか作っていないのでこれが収入の大部分になるのです。
間もなく業者がやってきました。手作りの秤で次々と重さを測っていきます。買い取り額は1キロでわずか6角(約9円)。中には大量生産し20籠以上も持ち込んで900元を手にする家族もいましたが、レブジホさんは5籠=320キロ。全部で195元=約2900円にしかなりません。半年以上かけてせっせと働いた成果が3000円にも満たないのです。今年のじゃがいもでの収入はこれが全て、あとはお金が必要な時に牛や豚、鶏などの家畜を売るのだそうです。

午前中いっぱい撮影し、山を下りました。途中でまたしても!事故目撃。ほぼ毎日どこかで事故を見かけます。今回は道の片側で起きていたので渋滞する前に通り抜けられましたがそれにしてもものすごい確率で事故が発生しています。原因はセンターラインオーバーです。

今度は正面衝突。どう見ても左の車が悪い。(中国は右側通行)

今度は正面衝突。どう見ても左の車が悪い。(中国は右側通行)

夕方になってイベント会場へ。民族色溢れる踊りや歌を撮影するのが目的です。そして会場へ、毎度入り口に群集が殺到する見慣れた風景。どうして並ぼうとしないのでしょう?、特売など早くしないとなくなってしまうものはまだ理解できます。しかし今回、チケットは前売りなので席は決まっています。なのになぜ大声を上げ、もがき苦しみながら先に入ろうとするのでしょう?何年中国を見てきてもこれだけはいつも不思議でなりません。さてこの会場、日本のコンサート会場と同じで会場内は撮影禁止です。私たちは許可も取っていませんがここからがゲリラ撮影の真骨頂、大群衆に混ざって阿蘇さんが警備の公安に「日本のテレビ局だ、ビザもある」とパスポートを見せて叫びます。さらに何の関係もない撮影機材の通関担保の書類を見せて「書類もある」とすごい剣幕で説明しています。群衆の警備で手一杯の公安は「わかったわかった、でもカバンは持ち込むな」と了承しました。かくして無事入り込むことに成功。これで美しい民族舞踊が撮れる!しかし、中で行われたのは・・・韓国や香港スターのコンサートでした。。。

コンサート会場

コンサート会場

有名スターの登場に会場は大盛り上がり

有名スターの登場に会場は大盛り上がり

2009 年 8 月 13 日

8月ロケ4日目:予想もしない驚くべき情報が・・・

今日も朝から大雨。早朝、ロビーに下りると金さんが「大問題だよ」と言います。「運転手の李さんから電話があって火把節は15日の夜じゃないか?と言っている」とのこと。
しかし火把節は旧暦の6月24日(今年は新暦8月14日)と決まっているはず。阿蘇さんたちもそう言っていたのに。とにかく確認すると、今年は西昌市建市30周年で西昌市政府が14日の夜に大イベントを市の中心でやるので例外的に翌日に祭りをやるとのこと。どうやら火把節と重なるとチケットが売れなくなるため祭りを15日にずらしたようです。
さて、ここからが大変。私たちの予定は15日朝に西昌を出発して成都に行き、16日に上海経由で日本へ帰るというものでした。しかも16日の夕方の上海発関空行きのANAは変更不可のチケットなのです。ここから16日中に日本へ帰るためあらゆる可能性を考えました。

  1. 15日の火把節撮影後、16日朝に西昌を出て成都、上海を経て大阪に一気に帰る。
    ⇒16日は成都行きの飛行機が一日中満席で ×
  2. 火把節撮影後、車で成都に行って翌日帰国
    ⇒成都までは車で約10時間。ただし山道の上ここ数日の雨でドライバーが危険と判断 ×
  3. 火把節撮影を21時半で切り上げて22:03分西昌発の最終列車で成都へ(約9時間)
    ⇒火把節は最後まで撮影したいし膨大な荷物を考えると ×

結局16日中に帰る策はなく、帰りを1日遅らせることを考えました。それぞれ仕事があるのでまずは本社に連絡し了解をとって、最大のネックである飛行機の変更に。ANAに電話すると「変更には1人当たり15万円(4人で60万円)かかります」との返答!ありえない金額に呆然とする中、金さんが上海の旅行者に連絡すると中国国際航空の飛行機なら片道2万円台でチケットが取れるとのこと。4人でも10万円以下。これぐらいの出費なら・・・ということでホテルも1日延長し何とか事なきを得ました。それにしても伝統行事の日程をこんなに簡単に変えていいのでしょうか??

飛行機変更作業の跡

飛行機変更作業の跡

きょうは喜徳県聯合村にてコシヒカリの成長を撮影します。行きの車の中はずっと日程変更の電話。今後の日程が確定したころ現地に到着しました。降りしきる雨の中稲はもう花も咲き終わって稲穂がまっすぐ上に伸びていました。9月10日頃から稲刈りが始まるということです。

成長した“喜徳の光”

成長した“喜徳の光”

取材班絶賛の中華料理店。

取材班絶賛の中華料理店。

2009 年 8 月 12 日

8月ロケ3日目:父の出稼ぎ現場を訪ねて・・・

この日も天気は雨時々曇り。朝から小林さんに同行してもらって山の村へ、今日は無事に到着しました。まずは家族の所在確認、骨折していたアイはすっかり回復して夏休みで帰省していました。父親はどこかと聞くと「出稼ぎに行った」とのこと。前回体調が悪そうだったので心配しましたが元気とのことでほっとしました。お母さんのレブジホさんが家事や労働も一人でこなします。この日は“すぐ近く”の市場に行くというので同行すると何と歩いて40分以上、しかも歩くスピードの速いこと!取材班は、時おり走りながらやっとのことでついていきます。市場では羊のエサになる草の種15キロを購入(500gで3.5元なので15キロは約100元=1500円)家族の収入から考えるとかなりの高額の買い物です。

標高3000mの市場

標高3000mの市場

羊のエサになる草を買うレブジホさん

羊のエサになる草を買うレブジホさん

村に戻ると、呪術者のビモが祈祷をしているようなので撮影。ビモの隣に座っている若い男性が依頼人で、李先生に通訳してもらったところによると、どうも最近体調がすぐれないとのこと。で、その原因をビモが診ると、「先祖の霊が何か不満を持っているらしい」のです。そしてニワトリを生贄にしたお祈りが始まりました。(前回のロケでニレムジュさんがやっていたのとちょっと形が違います)絞められたニワトリが火であぶられ、解体されていきます。儀式がいつまでも終わらないので途中で退席させてもらいました。

ビモ(右)と依頼者(左)

ビモ(右)と依頼者(左)

この鶏が生贄に・・・

この鶏が生贄に・・・

ビモ

ビモ

その後、小林さんと村人たちの交流を撮影、今は夏休み中なので毎年この時期は家庭訪問などを行っています。学校から少しはなれた子どもの家に行ってみると、家族総出でじゃがいもの収穫をしていました。よく見ると子どもが4人、イ族は3人までしか子どもは認められていないので1人分罰金を払ったそうです。その額何と1万元!!年収の5倍に相当します。この両親も若いのですがやはり中国語は話せません。そしてやはり子どもを少なくとも高校までは行かせたいと話しました。ここに限ったことではないのですが、
今中国の親たちは子どもに全てをかけます。それは子どものためでもあると同時に自分の老後のためでもあります。昔と違って市場主義経済となった今、子どもが大学を出て沿岸部の良い企業に就職したり会社を興したりすれば、巨万の富が転がり込む可能性があります。この村では少なくとも州都の西昌で公務員になれれば安定した収入が得られると皆考えているようでした。

じゃがいもを掘る一家

じゃがいもを掘る一家

手伝う小林さん(一番左)

手伝う小林さん(一番左)

子どもたちもがんばる

子どもたちもがんばる

この村では8月初旬がじゃがいも収穫のピーク、あちこちでじゃがいもを掘る姿が見られます。主不在のニレムジュさんの家の中でも3分の1ぐらいのスペースをじゃがいもが占拠していました。
そして小林さんにインタビュー。「病気になる原因が不衛生であることを知ってもらうと同時に、勉強の楽しさをまずは知ってもらいたい」と彼女の先輩の代から歯磨き・手洗いの奨励や本来の授業にはない図工や音楽などの指導をして学校が楽しくなる工夫をしてきたのです。子どもたちが勉強に興味を示すと親もつられて意識が変わってきたといいます。
小林さんは12月に帰任し後任は来ません。今後、地元の先生たちを中心にこれを続けていければいいのですが・・・

午後、ニレムジュさんの出稼ぎ先が分かりました。彼は携帯を持っていないのですが彼の兄に連絡がつき、出稼ぎ先まで連れて行ってもらうことになりました。山を下りて西昌の郊外まで行くと、彼は鉄道の警備員をしていました。仕事中の姿を少し撮影させてもらおうとしたところ、許可をとってなかったので彼の上司が怒っています。仕事の姿はこっそりデジカムで撮影し、外でインタビューしました。やはり気になるのは子どものことばかりです。7月に学年末テストがあって、3年生のムティはその結果次第で新年度が始まる9月以降、姉と同じ昭覚県の中心小学校へいけるか、別の小学校の本校に行くかが決まります。今年は結果が出るのが遅くまだ分からないとのことでしたが父は「多分ダメだろう」と悲観的でした。家でいろんなことがあって勉強をちゃんと見てやれなかった結果、成績がすいぶん落ちていたのだそうです。家族に伝えたいことは?と聞くと「子どもがちゃんとお母さんの言うことをきくように伝えてほしい」と語りました。

2009 年 8 月 11 日

8月ロケ2日目:3000mの村に向かうも・・・

朝、5時30分起床。7時半の飛行機で西昌へ飛びました。出張中だった小林さん、土屋さんも同じ便で西昌へ。今回は火把節目当ての観光客が多く飛行機も満員でした。到着したホテルはまだできたばかりの新しいビジネスホテル、きれいだし、お湯もちゃんと出ます。前日泊まった成都のホテルの浴槽の中には息絶えたゴキブリが2匹いてシャワーもできなかったので、新しいホテルと聞いて一同ほっと胸をなでおろしました。

出来たばかりの新しいホテル。床が抜けそうなほど薄い。1泊180元

出来たばかりの新しいホテル。床が抜けそうなほど薄い。1泊180元

チェックインを済ませ、まずは火把節の中心となる場所のロケハンに。今回どうしても撮影したいのは祭りの俯瞰(ふかん)。祭りの中に入った映像は迫力はあるのですが、全体像が見えません。何としてもカメラ1台は近くのビルの屋上から撮りたい。で、現場に行くと目の前にちょうどいい感じのビルが・・・。しかしそこは金財ビルという市政府の財務局のビルでした。通常外国人が入ることは許されません。「ここを何とかしたい!」というのが今回最大の課題となりそうです。コーディネーターの金さんが四川省の隣の雲南省にいる実力者に連絡したところ「何とかする」との心強い返事でした。

このビルの上から撮れれば・・・

このビルの上から撮れれば・・・

火把節広場。撮り方を打ち合わせする取材班

火把節広場。撮り方を打ち合わせする取材班

昼食後、早速標高3000mの山の小学校へと向かいました。明日も行くのですが、取材対象の一家の所在を確認しておきたかったのです。携帯もないので行ってみるしかありません。小学校への道は山の一本道で、前回事故で2時間以上も通行止めになった経験があります。しかも今日は雨、地元の人によると雨の日は必ず事故が起きるとのこと。そして・・・案の定、途中で登りのトラックの横っ腹に下りのワゴンが突っ込んでいます。車を降りて駆けつけると脚や頭から血を流しながら座っている人も。今回は発生したばかりでまだ救急車も警察も来ていません。道は完全にふさがれています。「おそらく3時間は動かないだろうな」ということでこれにて断念、初日から波乱の幕開けでした。

雨の中の事故 ワゴンがトラックに突っ込む

雨の中の事故 ワゴンがトラックに突っ込む

夜は阿蘇さんの店「幸福館」へ。前回来た時と変わっていて舞台でイ族の踊りやパフォーマンスを見ることができるショーレストランになっていました。まだ正式オープン前でしたが演舞を見せてもらうことに。驚いたことに登場するのはほとんどが店の従業員、
給仕の女性たちがイ族の踊りを、掃除のおばさんが口琴を、そして1000度に熱せられた鉄をなめるビモ(呪術者 このひとは従業員ではないです)。まだ踊りも完全にそろっていなくて未完成ですが練習していけばなかなか面白い試みだなと思いました。
そして音声の石垣君は恒例のビール2本半一気飲みで盛り上げました。

口琴のおばさんと

口琴のおばさんと

イ族の踊り

イ族の踊り

1000度に熱した鉄をなめるビモ

1000度に熱した鉄をなめるビモ

恒例!一気飲みの石垣君

恒例!一気飲みの石垣君

不運かと思われる1日でしたが、後で聞くと午後から成都の空港が停電でマヒしたとのことで朝一の便で来た我々はむしろラッキーだったのかもしれないと前向きに考え直すことにしました。

2009 年 8 月 10 日

8月ロケ1日目:3度目の涼山イ族自治州

前回のロケから2ヶ月。現地はどのように変わっているのか?はやる気持ちを抑えながら取材班4人は関空へ。しかし台湾で大被害を出した台風8号が北上して上海を直撃しています。関空でも離陸前に「上海の天候次第で引き返す場合もあります」とアナウンスが。11時15分、ほぼ定刻に上海浦東国際空港に到着したものの乗り継ぎの成都行きの飛行機が遅延。今日は成都で18時からイトーヨーカ堂の総経理のインタビューがあります。結局2時間遅れ、インタビューは諦めました。

遅れた飛行機を待つ取材班(上海浦東空港)

遅れた飛行機を待つ取材班(上海浦東空港)

20時近くになってようやくイトーヨーカ堂に到着。食品部の立石部長と土屋さんも来てくれていたのでイ族が作るコシヒカリ、「喜徳の光」の売り場を案内してもらいました。
驚いたことに22時を過ぎても店内は人だらけ。さすが人気のヨーカ堂です。喜徳の光も他の米より2倍から3倍も高いにも関わらず、見ている間だけで2袋(1袋5キロ)売れていました。今後はこの米をおにぎりや弁当にも使っていきたいという立石部長。
あと2ヶ月で日本に帰国する土屋さんにもこれまでの成果と課題を聞きました。
夜は当然四川料理。前回と同じく空港から徒歩30秒の機場ホテルで就寝です。

午後10時を過ぎても満員の店内(成都イトーヨーカ堂)

午後10時を過ぎても満員の店内(成都イトーヨーカ堂)

エンドに積まれた“喜徳の光”

エンドに積まれた“喜徳の光”