シリーズ13億人の深層 第3章
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2009 年 2 月 9 日

ロケハン3日目:標高3000m 少数民族イ族の村へ

朝から念願の標高3000mのイ族の村へ。土屋さん、小林さん、李先生も同行してくれました。出発して15分ほどすると早くも整備された山道に入ります。1500mの西昌から1時間ちょっとで3000mに到達しました。村に到着! 驚いたことに村の中を幹線道路が貫き大型トラックやバスが轟音を響かせて通っています。そして大きな電気の塔。土で出来た昔ながらのボロボロの家と近代化の象徴がアンバランスに共存しています。道路や電気が通ったのは数年前、李先生によると初めてバスを見た村のおばあさんが「大きな猫がすごいスピードで走っていった!」と叫んだそうです。

奥が村。幹線道路が走る。

奥が村。幹線道路が走る。

家畜との共同生活。

家畜との共同生活。

2月いっぱいは小学校が休みなので、とりあえず家庭訪問をして今回の番組の主人公となる家族を探すことにします。まずは一番成績がいいというニレルハ君の家に。聞いてはいましたが、庭や家の中に豚やニワトリが同居しています。そして、もう一軒紹介してもらったのがニレルハ君の従兄弟、ニレムティ君の家。両親と3人兄弟の5人家族です。
長女のアイさんは5年生。成績もよく、村の分校を卒業した後、町の中心小学校に行っています。(この村では小学校は分校で、3年を卒業すると本校や町の小学校に編入することになります)長男のムティ君は3年生。そして、末っ子のアカちゃんは恥ずかしがり屋の1年生です。

父 ニレムジュさん(右) 長女 ニレアイ(中央) 次女 ニレアカ(左)

父 ニレムジュさん(右) 長女 ニレアイ(中央) 次女 ニレアカ(左)

長男 ニレムティ(右)と いとこのニレルハ(左)

長男 ニレムティ(右)と いとこのニレルハ(左)

学校が休みの間、子どもたちは皆家の手伝いです。ムティたち男の子は羊の放牧へ。
しかしここは標高3000m、子どもたちと一緒になって走ると少し息切れします。
コーディネーターの金さんは子どもたちにつられて動きすぎ、高地特有の頭痛で元気がありません。

放牧するムティ

放牧するムティ

ようやく家に帰ってくると、父親の二レムジュさんが昼食を食べて行けといいます。
「もう帰るから大丈夫です」「いや、遠くから来ていただいた客人にご飯を食べさせずに返すわけにはいかない」「いやいや、本当に結構です」などとやりとりが続き結局ご馳走になることに。二レムジュさんは8人兄弟で、3,4人兄弟が家に来ていました。近所の人とかも自由に出入りしているので正確には誰が兄弟で誰が他人なのかわかりません。賑やかに会話をしているうちに何やら不穏な動きが。そして間もなく恐れていたことが・・・。
私たちのためにニワトリが1羽外から連れてこられました。状況を察して「いらないから!やめてやめて!と口ぐちに叫ぶ取材班。しかし次の瞬間には毛をむしられたその首にナイフが・・・そして滴る血・・・申し訳ない。成仏してください。。

ニワトリが・・・

ニワトリが・・・

鍋を囲んで談笑

鍋を囲んで談笑

ごちそうになる取材班

ごちそうになる取材班

じゃがいもとニワトリの煮物

じゃがいもとニワトリの煮物

さて、料理が出来るまでの間、まずはペットボトルに入ったお酒(白酒?)を飲むようにすすめられます。何が入っているのかわからないのですが、逃げられないので気合で飲むとかなりきつい。続いてさっきの鶏とじゃがいもが入った鍋料理に、蕎麦で作った饅頭がでてきました。残しては悪いと必死で食べようとする取材班。しかしこれは大きな間違いだったのです。
イ族の週間では客人を招く時、自分たちは外に出て客人だけに先に食べさせます。そして、客が食べ終わったあとで自分たちがその残りを食べるのです。
私たちの食事が終わるとここの家族はもちろん、親戚やその家族たちがやってきてみんなで食べ始めました。鶏肉はここでは貴重な食料です。全部食べなくてよかった・・・

取材班が食べ終わると家族が食べる

取材班が食べ終わると家族が食べる

さて、この家庭、一見普通の家庭のようですが、聞くと生活は激変期にありました。この村では標高が高すぎてじゃがいもと蕎麦ぐらいしか作物が育ちません。両親の収入はじゃがいもや羊を売ったお金で年収2000元(3万円)ほど。ところが奥さんが去年腹部を手術して1万元(15万円)以上かかったのです。実に年収の5倍。去年建設現場に出稼ぎに出ていた父親は稼いだ金を全て使い、さらに借金。今年も来週には武漢に出稼ぎに出て10月まで戻らないつもりだといいます。何とか3人の子どもを上の学校にやりたいという父親の思いを聞き、今回の番組はこの家族を中心に取材することに決めました。

※ちなみに2006年から中国では義務教育が授業料免除になりました。ただ、町の小学校は全寮制で、食費などもかかるので3人の子どもが全員進学すると年間7000元もかかるのだそうです。

この日の夜は、土屋さん、小林さんたちとキノコ鍋の店へ。キノコは雲南省が有名ですがここも山岳地帯だけあって堪能できました。去年と比べて何ですが、今年のロケは食べ物が美味しいのです。

キノコ鍋

キノコ鍋

2009 年 2 月 8 日

ロケハン2日目:意外に都会!西昌という町

早朝の成都空港

早朝の成都空港

朝6時半にホテルを出発、成都空港から四川省南西部、チベットと雲南省に隣接する涼山イ族自治州へと向かいます。その名の通り半数が少数民族イ族という山岳地帯です。あまり聞いたことのない民族だと思われるでしょうが、実は中国では漢族を除くと5番目に多い民族なのです。雲南省、貴州省にも分布していて、50年ほど前までは奴隷制度があったといいます。その涼山州の州都西昌まではおよそ600キロ。飛行機で50分です。ちょうど東京―大阪間を飛んでいるくらいの感覚で、離陸したと思ったらすぐに着陸します。午前9時、西昌に到着。

西昌空港(漢字の左はイ族文字)

西昌空港(漢字の左はイ族文字)

標高は1500mですが思ったほど寒くありませんでした。空港には今回お世話になるJICAの土屋さんと、小林さんが迎えに来てくれていました。お2人を紹介すると・・・

土屋賢治さん・・・
有機米(コシヒカリ)を生産管理する信頼農園に2007年11月、JICA青年海外協力隊の村落開発普及員として派遣。JICAで初めての任務で、貧困地域を経済活動を通して援助から自立へと導くことが目的。具体的には村で作ったコシヒカリを買い上げて一般の市場ルートに乗せ、販路を開拓。利益は民族中学の貧困学生の支援に充てる
小林順子さん・・・仙台出身
2007年12月、JICA青年海外協力隊の日本語教師として派遣。西昌にある涼山民族中学の中日職業訓練クラスで日本語を教える。その一方で、週に一度車で1時間ほど離れた標高3000mの昭覚県大石頭村の小学校に行き、ボランティアで衛生教育などを行っている。
土屋さん(左)と小林さん(右)

土屋さん(左)と小林さん(右)

今回も車はドライバー付きで確保。とりあえず今日は町の雑感を見る予定です。去年出来たばかりという市の中心部にあるホテルにチェックイン。目の前には共産党とイ族の友好を示すという大きな像がありました。さて、このホテル。1泊3000円ぐらいなのですが中がとにかく広い。はっきり言って無駄。でも地方では珍しくきれいな上、お湯が問題なく出ます。去年のホテルと比べると、正直それだけでうれしくなりました。

やたら広いホテルの部屋

やたら広いホテルの部屋

イ族と共産党の友好の像

イ族と共産党の友好の像

早速、土屋さん、小林さんに案内してもらってまずは2人が働く涼山民族中学校へ。
あいにくこの日は学校が休み。進学大学名が書かれた看板があったので見てみると、四川大学や清華大学、中山大学などそうそうたる大学名が・・・。ほとんどの学生が普段は朝6時から夜の12時ごろまで勉強づけなのだそうです。以前、インドのIT専門大学で学生を取材した時、やはり土日も休まず1日18時間ひたすら勉強する姿を見ました。貧困から脱出するには勉強しかないというハングリー精神が日本とは比べ物になりません。日本の未来は大丈夫か??という不安に駆られます。

進学した大学のリスト

進学した大学のリスト

その後西昌の旧市街を見学。イ族の民族衣装を着た人たちが行きかいます。魚、野菜、肉、果物、鶏、何でも売っています。午後は、西昌最大の観光地である邛海(湖)、奴隷博物館(といっても別に奴隷制度時代の様子が分かるわけではありません)、さらに市街地を次々と回ってこの日のロケハンは終了です。

西昌 旧市街

西昌 旧市街

邛海湖

邛海湖

イ族料理。器も民族特有。

イ族料理。器も民族特有。

イ族の踊り

イ族の踊り

夕食はイ族の踊りが見られるレストランに行きました。今回通訳としてもお世話になる民族学校のイケメン日本語教師、李先生も合流しました。(李先生はイ族で、日本に行ったことがないにもかかわらず日本語がペラペラです。)イ族カラーの黄色と赤と黒で彩られた器にイ族料理。トートーロウという豚肉の煮物?が名物です。しかも取材班が最も恐れていた白酒(高粱酒 アルコール度数が40~60度くらいある。詳しくは去年のHPを参照)攻撃がここではなさそうです。おととし(新疆ウイグル自治区)も去年(内モンゴル自治区)も味わったあの苦しみを今年は逃れられそうな、少なくとも毎日のように潰れることはなさそうな気がします。1時間半ほどが過ぎ、ビールだけで宴は終了。明日からいよいよメインのロケ場所のロケハンです。

2009 年 2 月 7 日

ロケハン1日目:今年の番組作り始動!

いよいよ今年の番組に向けてロケハンに出発です。私にとっても初めての四川省、カメラマン増田氏、報道部の児島記者とともに上海へ。ここで今年もお世話になるコーディネーターの金暁慶氏と合流し4人で成都へ。

成都空港

成都空港

午後6時、成都に到着。大都会です。気候は大阪より少し暖かい感じ。ホテルにチェックインして、さあここからが今日の仕事。市の中心にある成都イトーヨーカドーで食品部の立石部長と待ち合わせ、着いたのは7時ごろですがお客さんが大勢います。実は夜8時ごろがピークなのだとか。世界的な不況を全く感じさせない光景は内需の力強さを感じさせるものでした。ここ成都イトーヨーカドーは世界中のイトーヨーカドーの中で売り上げ第2位、利益は何と1位ときき納得しました。

成都 イトーヨーカドー

成都 イトーヨーカドー

夜でも客で賑わう

夜でも客で賑わう

さて、目的はここで売られている“コシヒカリ”。といっても日本からの輸入品でなく今回ロケハンに行く四川省涼山イ族自治州で作られている有機栽培コシヒカリです。
現地の普通の米の2倍以上という5キロ78元(約1100円)ですが、都市部では食に関する安心安全の意識が確実に高まっていて結構売れています。この米については後日詳しく書きますが、店内の寿司コーナーのシャリに使ったところ10倍以上売れるようになったとのことです。

これが有機コシヒカリ「喜徳の光」

これが有機コシヒカリ「喜徳の光」

今日は見るだけ。ここに12年もいるという三枝総経理にもごあいさつし、その後は立石部長と共に夕食に、もちろん四川料理! 期待を裏切らない美味しい店でしたが、それ以上に皆をひきつけたのは部長の裏話。白酒の中身を入れ替えてクレームをつけてくる客の話などスタッフ全員楽しませていただきました!

四川料理 辛そ~

四川料理 辛そ~