8日目: モンゴル国境の湖

2008 年 8 月 2 日


ベイラル湖 対岸はモンゴル国

朝から美しい湖の撮影に出発、ベイラル湖という国境の湖で対岸はモンゴル国です。ただガイドさんは良かれと思って連れて行ってくれたのだと思いますが、何でもないごく普通の湖です。去年新疆で行ったカラクリ湖やカナス湖のような大自然をイメージしていた取材班は完全に拍子抜けでした。3時間もかけて行ったのですが5分ほどで撮影終了。湖よりも面白かったのは途中で見た石油の開発です。最近この辺りでも開発が盛んになっていていて草原の中を場違いな派手なオレンジ色のパイプラインが延々と横切っています。そのパイプラインを羊の群れが越えていく風景にはものすごい違和感を感じました。ただ途中で見た馬の群れの水浴びはアフリカのオアシスのようで圧巻でした。


馬の群れの水浴び

ホテルに帰ると公安が来ていました。どこに撮影に行ったのかガイドにしつこく聞いています。「ノモンハンには行ってないか?」という声も聞こえます。この辺りは旧満州国、ノモンハンでは国境線をめぐって日本軍、モンゴル軍、ロシア軍が交戦しました。私たちは草原を撮りに来ただけですが、やはり疑われているようです。今日のところはガイドが何とかうまくやってくれましたが、ここにもあまり長居しないほうがよさそうです。

7日目: 初めて見た本物の遊牧民!

2008 年 8 月 1 日


これぞ草原

今日は朝からハイラルの南200キロにあるモンゴルとの国境の町シンバルフ左旗まで移動です。昨日の到着時はすでに日が暮れていたのでよく分かりませんでしたが、出発してしばらくすると辺り一面どこを見ても草原地帯です。どこまでいっても草原なのでどこで撮影したらいいのか迷うほどです。何時間か経ったとき、遠くに遊牧民のパオが見えました。


遊牧民族のパオ

ガイドに聞くと本当の遊牧民だとのこと。これまでにも観光用につくられたパオは何度も見たことがありますが、本当の遊牧民が住むものは初めてです。撮影をおねがいすると快くOKしてくれました。中に入ると意外にもテレビやDVDプレーヤー(電気は風力)もあり、文明化されています。パオは2つあって、新しいほうは息子のものだそうです。


パオの中は近代化 テレビやDVDも

インタビューするとこのパオは3月に作ったものだそうです、冬が来るとたたんで遠く離れたレンガ造りの家で春になるまで寒さをしのぐのだそうです。このパオをたった1時間半ほどで作ってしまうというから驚きです。ここに住んでいる老夫婦は小学校の同級生だったそうです。何十年も2人で遊牧生活をしてきた老夫婦の仲睦まじい様子をみて何だか少し感動しました。


仲睦まじい遊牧の老夫婦

さて、一見すると美しい草原が広がるこの地にも、やはり砂漠化の影響が出てきています。老夫婦によると草の背丈が以前よりも低くなっているうえ、羊が食べる草の量も減っているのだそうです。そういえば道端には「退牧還草」という看板があちこちに建てられています。これは「放牧を減らして草地を回復させよう」という政府のスローガンです。ここもこのまま放って置けばいつかあのオルドスの沙漠のようになってしまうのでしょうか?

途中、羊の群れなどを撮影しながら夕方近くに到着。最高に美しい草原の夕景を見ることができました。増田カメラマンも児島記者も(私もですが)撮影ほったらかしで写真を撮りまくりました。ぜひもう一度見たい風景です。


夕日の中を牛の行進


夕景に光る草原

昼間、ナレンファさんから金さんに電話がありました。7日、8日は会議でいないという内容です。本来は7日と8日にナレンファさんの放牧の様子を撮らせてもらう予定で、これがないと禁牧が解けた後の映像がなくなってしまいます。政府の横槍かと疑いましたが、坂本さんにお願いして裏を取ってもらうと、どうやら本当に7日から11日まで東勝で会議があるようです。そこで急遽予定を変更、ここでの撮影を1日早く切り上げて5日にナレンファさんの家に行くことに。ちょっとあせりましたがどうにか一件落着。

6日目: 美しい草原を目指して陸と空で大移動 結果は・・・

2008 年 7 月 31 日

さて、今回のロケでぜひ撮影したいもの。それが美しい草原と遊牧民です。オルドスやフフホト周辺にはあまり残っていないため、私たちは内モンゴル北部、ロシア、モンゴル国との国境付近にある町ハイラルを訪れることにしました。坂本さんとはこの日の朝から別行動です。8時半にホテルを出発、当初の予定では300キロ離れた東勝まで行って、翌日ハイラルに行くつもりでしたが、今日中に行ってしまおうということになり大移動が始まりました。フフホトまでは約700キロ、そこまで車で行って、さらに2時間飛行機での移動です。車中では金さんがずっと電話でやり取りしています。聞いているとどうやら宿がなくて大変なようです。日本でも今内モンゴルの草原ツアーは旅行代理店の多くが企画する人気商品、中国国内の旅行社のツアーもたくさんあってまさに8月は観光客のかき入れ時なのです。ハイラルから離れればあるようですが今日は着くのが遅いしこれ以上の移動は体力的にも大変なので何とか探したいところです。


すべてがきらびやかなハイラルの町

とにもかくにも約12時間2000キロの旅の末、ハイラルの町に到着、北緯49度。日本で言えば北海道の稚内が45度くらいですからかなり北です。冬にはマイナス40度以下になるといいます。さすがに夏でも涼しくて夜は半袖だと少し寒いくらいです。着いたのは夜だったのですが、町中がネオンで溢れかえっています。電力不足が国家の問題となっている中でどこもかしこもパチンコ屋のようなネオンです。市政府の建物までど派手なネオンで彩られています。きれいといえばきれいなのですが日本人の感覚では「ちょっとやりすぎ」です。


2つ星

これから4日間お世話になる運転手さんたちが探してくれた宿に到着しましたが、空港からの道で見た5つ星、4つ星のホテルとは似ても似つかない薄暗いホテルでした。星を確かめると何と2つ。地方の2つ星と聞けば中国に詳しい方は分かると思いますが、もはやお湯が出ることなど期待できません。しかも5階建てですがエレベーターがありません。不幸中の幸いで2階に一部屋だけ空いていたのでカメラマンの増田氏をその部屋にして機材をすべて入れ、他の者は全員5階です。部屋にはベッドが2つ。でも幅が60センチぐらいしかありません。寝返りを打ったら落ちそうです。タオルは何日も換えていないのでしょう。かなり汚れています。部屋の中にはハエやゴキブリの子供。布団に入るのは恐いので(確実にダニがいそうなので)ジーンズをはいたまま布団の上に寝ました。


写真ではすごさが伝わらない・・・

と、まあ中身もひどいのですが何がビックリしたかというとこの部屋で何と1泊580元。(日本円で約9000円)580元といえば地方都市の5つ星に泊まれる値段です。おそらく普段は100元ぐらいだと思います。足元を完全に見られていますがもう他を探すあてもなく、渋々納得。そんなホテルでもこの日はさすがに疲れていてすぐに寝入ってしまいました。