砂漠に埋もれそうな家を探しに

2008 年 2 月 29 日


砂が風で飛び 根が露出

まずは朝から放牧に。内モンゴルでは2001年以降4月1日から6月30日までは禁牧期間とされていて放牧することができません。草が最も成長するこの時期に放牧を止めることで草地を回復させようという政策です。この日も気温は氷点下ですがナレンファさんと一緒に放牧に出かけました。今ではその放牧でさえどこに行ってもいいというわけではありません。各家に対して2キロ四方ぐらいの柵があってその範囲内で放牧するのです。もはや本当の意味での遊牧文化はなくなりつつあります。突然ナレンファさんが「ここを見て」と指差しました。見ると草の根元がえぐれています。去年の10月からわずか5ヶ月、風で5センチ以上もの砂が飛んでしまったそうです。風のすごさを目で実感できました。


モンゴル風肉じゃが“ホイツァイ”

放牧から戻ると朝食、出てきたのがホイツァイという日本でいえば肉じゃがみたいな民族料理なのですがこれがおいしい。思わず3杯ご飯をおかわりしてしまいました。

さて、ロケハンの目的の一つが砂漠に埋もれそうな家探しです。チャガンノール地区にあるといううわさは聞いていたのですがどこなのか分からないのでナレンファさんに聞いてみると連れて行ってくれるとのこと、途中に彼女と坂本さんたちが3年前から植林をしている場所がありました。1,2年にしてはかなり大きく育っています。元々は緑があった場所なので地下水は浅いところにあります。1~2メートル掘れば水が出るのです。これなら定着率もかなり高くなるでしょう。そしてナレンファさんのパジェロでさらに行くと景色が徐々に本格的な砂漠に。と思ったら坂道でタイヤが砂でスリップし、動かなくなってしまいました。みんなで押してもだめ。そのうちナレンファさんたちがモンゴル語でなにやらひそひそ話を始めました。どうやらタイヤのボルトか何かがおかしいらしく、ここで断念し引き返すことに。現地を見ることができなかったので次回のロケはぶっつけ本番になりますが、砂漠の中で故障しても困るのでここはおとなしく引き返すことに・・


砂漠でパジェロも進めず

そして、再びパジェロでオトク旗の中心地であるウラン鎮を目指します。途中、おそらくナレンファさんの知り合いである(というか会う人すべてが知り合いです)牧民の家で、今撃ってきたという鳥をご馳走になりました。新鮮なのでおいしい!白酒を飲んでいい感じになったところで外に出ると天気が急変、すごい砂嵐です。さっそく撮影しますが正直白酒が回っていてボーッとしていました。こういう時、酒を全く飲めない増田カメラマンがいつも正気なので助かります。後で知ったのですがこの時の砂嵐が3月2日に日本に到着、日本で今年初の黄砂として全国的なニュースになっていました。まさに発生源をこの目で確認してしまいました!!そのあと、再び車にのって移動、ナレンファさんが運転、一番大きな金さんが助手席に乗り、他の3人が後ろなのですがこれが狭い。特に一番ひどい時は後ろに4人、体重90キロのナレンファさんも乗ってきて気分は山手線のラッシュでした。

2時間以上かかってようやくウラン鎮に到着しました。結局この日は何一つ決まらず。残りはあと3日、さすがに明日は何か見つけないとまずいな~と思いつつ就寝です。


仕方なく歩く


ヤギと羊を放牧するナレンファさん


2月29日 今年初の砂嵐


近くの牧民の家で

ナレンファさんとの出会い

2008 年 2 月 28 日


モンゴル族の結婚式

今日からロケハン。内容はある程度決めているものの、取材箇所は全く決まっていないのでとにかく動いて足で探すしかありません。期限は今日も入れてわずか5日。坂本さんにおんぶに抱っこ状態ですがとにかく彼が植林活動をしているオトク旗(東勝から西へ300キロ)までスチントウさんに送ってもらいました。ロケ地については坂本さんが植林で親しくしている林業局長に会えば何とかなるような気がしていました。オトク旗への道中、坂本さんの携帯がなりました。聞くと、「知り合いのモンゴル族の子どもが結婚式をしているので来ないか」ということでした。とにかく行ってみようということで会場へ、中には500人を超える人が来ていてものすごい騒がしさです。歌あり、踊りあり、白酒あり。そしてモンゴル衣装を来た夫婦に出会いました


ナレンファさんです。

その女性がナレンファさんです。坂本さんは去年から資金を投資して彼女と一緒に牧場を経営しています。そしていきなりの白酒…アルコールは38度なので去年新疆で体験した52度に比べいくぶん飲みやすい気がします。とりあえずは飲んで交流。そして昼から酔っ払い。坂本さんもかなり飲んでいますが、慣れているだけあって顔色が変化しません。

その後、ナレンファさんが「家に来ないか」と誘ってくれたので、迷いましたがここはのったほうがいいだろうと判断、ただし行ったら最後その日は戻って来れないので彼女の家に泊まるしかありません。そして砂漠の道を2時間近く走りました。酒が回っているので車に乗るとすぐに爆睡、免許とりたてというナレンファさんですがでこぼこの砂漠をかなりのスピードで運転しています。何度も天井に頭をぶつけながら何とか到着。さっそく羊やヤギのエサやりシーンを撮影し、夕食です。

モンゴル民族の家庭料理を食べ、民族楽器の四胡の演奏もあり和やかな夜ですが、午後8時になるともう寝る時間です。日が暮れたら寝る、健康的なのでしょうがいつも深夜に寝ている私たちには結構苦痛です。外に出てみると星空の美しいこと!偶然にも月が出ておらず星というのはこんなにもあるのか!と一同驚きです。40前後の男4人で(増田カメラマン39 私40 金さん41 坂本さん42)しばらくうっとりと星空を眺めていました。そして就寝、男4人、一つの部屋で川の字になって寝ました。


ナレンファさんの二男とお嫁さん


坂本さんとナレンファさんの牧場


氷点下の中 子ヤギに乳を飲ませる

中国・内モンゴル自治区へ

2008 年 2 月 27 日

今日からロケハンに出発。今年はカメラマンの増田氏に同行してもらいます。関空で今回の番組の主役になるであろう坂本毅さんと合流、3人で北京へと向かいました。


夕暮れのオルドス空港

11時ごろ北京国際空港に到着し、上海人のコーディネーター金暁慶氏と合流しました。さて、オルドス行きの飛行機は1日1便、夕方6時発、まだ5時間以上あります。ということでみんなで空港のネットカフェに入り浸りメールチェックなど。珍しく定刻に離陸した飛行機は午後7時にオルドス空港に到着しました。気温は氷点下。上海支局長時代にも一度も来た事がない初めての内モンゴルです。北京からたったの1時間。あまりに近くて驚きました。距離にして800キロぐらいですが、首都のそんな近くまで砂漠化が起きているのかということを実感しました。

この空港は2年程前にできたばかりで新しく快適です。迎えに来てくれたのは坂本さんの知り合いで以前岡山大学に留学していた(有名な吉川賢教授のもとで学んだそうです)モンゴル族のスチントウさんです。今はオルドスの緑化会社を経営しています。オルドスの中心地、東勝に入ると結構な発展振りです。去年の新疆もそうでしたが地方都市もかなり発展してきることが感じられます。


初日、ホテルで食事

内モンゴルの中で一番発展している都市は実はここオルドス市なのです。首府のフフホトだと思っていたのですが意外でした。経済成長率は15%前後で給与水準も内モンゴルで一番だそうです。理由は豊富な資源とカシミヤです。オルドスは良質な石炭の一大生産地であるとともに、最近では天然ガスが次々に発見されパイプラインはすでに上海にまで到達しています。そして、今回の番組とも大いに関係があるカシミヤ。世界最高品質のカシミヤはここオルドスで採れるのです。大阪のユニチカが技術協力していたオルドス集団は今や巨大企業になり、世界的なカシミヤ需要の増加を受けて牧民が飼うカシミヤヤギの数も増加しました。ところがヤギは草の根まで食べてしまうため次第に土地から草がなくなり砂漠化が進んでいるといわれています。(原因は他にも温暖化による雨量の減少や農地開発による土地の荒廃などがあります)いろんな意味でオルドスは注目の地域です。

今日泊まる4つ星のホテルはやたら広くてエレベーターにたどり着くまで2分ぐらいかかります。部屋はまあまあ快適。ホテル内で食事をして本日終了です。