高山勝成、29歳。もっともっと強い男がいる。そんなボクサーと拳を交えたい

プロボクシングには「主要4団体」という言葉がある。日本でもお馴染みのWBC(世界ボクシング評議会)、
WBA(世界ボクシング協会)に加えIBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)。
JBC(日本ボクシングコミッション)では王者の乱立を防ぐためWBCとWBAしか公認しておらず、
IBF、WBOは統一タイトル戦に限って認めているという現状がある。

そんな中、高山勝成(たかやま・かつなり・29歳)は日本を飛び出しIBFのリングで戦っている。
17歳でプロデビューすると2005年4月、WBC世界ミニマム級王座を獲得。
翌年11月にはWBA同級暫定王座にも輝いた。
2009年7月、WBA同級タイトルマッチで敗れ一度は引退するが、
「IBFやWBOにはもっともっと強い男がいる。そんなボクサーと拳を交えたい」と現役続行を宣言する。

ところが現状のJBCの規約ではIBF、WBOで戦うには国内ライセンスを返上せねばならない。
それは《日本で試合ができない=引退》を意味する。
高山はフィリピンでライセンスを再取得すると、練習の拠点を同国のALA BOXING GYMに移す。
日本を飛び出し、海外のリングで戦う環境を着々と整えていく・・・。


日本からAIRを3機乗り継いで約23時間のところに
南アフリカのイーストロンドンはある。
アフリカ大陸のほぼ最南端に位置したこのローカルリゾートは、住民の8割以上が黒人。
日本人などの東洋人はほぼ見かけない。
3月30日(金)、そんな辺境の街のリングに高山は立っていた。
IBF世界ミニフライ級タイトルマッチを戦うためだ。
会場を埋め尽くした約2,000人の観衆のうち、高山に声援を送るのは
日本からやって来た陣営の日本人6名だけ。
そんな100%アウェイの中で高山は死力を尽くしたが、結果は0−3の判定負け。

高山自身は勝利の手応えを感じたものの、2009年に海外へ活路を見出した時点で
「KO以外では勝てない」覚悟もできていた。
「なぜ王者に倒されるのを覚悟で倒しに行かなかったのか…」
日に日に後悔の念は膨らんだ。

そんな高山に思わぬ声が掛かった。世界挑戦者決定戦出場のオファー。
3月の世界戦の一方的な判定に主催団体も疑問を感じていたのだ。
10月13日(土)、フィリピンの首都・マニラからバスで約6時間のところに位置する
バギオシティが決戦の舞台。
対するはIBF世界ランク11位のマテオ・ハンディグ22歳。
この試合に勝てば再びミニフライ級世界タイトルマッチの出場資格を得る・・・。
高山の拳に一層力がこもった。