踏んだり蹴ったりのワケあり大家族
重すぎる希望を託された四男坊の姿に胸を打たれる
フィリピン中部の島、ボホール島に暮らすサルコン一家は
魚市場の仲卸として働く父親の僅かな収入で生計を立てている。
日々の食べ物にも事欠く暮らしぶりなのに、
アラサーの長男は働かず家でぶらぶら、
次男は麻薬中毒の前科者で問題ばかり起こし、
長女は父親のいない2人の子供を連れて実家に戻ってきた。
海を望む入江の上に建つバラックで寄り添うように暮らすワケあり12人家族だ。
家族の期待を一身に背負うのは四男坊のジョスコーロ・サルコンさん(18)
島の船員学校に進み外航船の機関士になるべく勉強漬けの毎日だ。
この学校からは川崎汽船など日本の海運会社で活躍する船員が巣立っていく。
世界の海を行き来する船員の3割近くがフィリピン人、
英語が話せて従順な国民性のフィリピン人は重宝され
日本を含む世界各国の船舶会社がフィリピン人船員の争奪戦を繰り広げている。
国際航路の船員はフィリピン人の平均の3倍もの年収が得られるとあって
若者たちの人気ナンバーワン職種だ。
外航船の船員になることこそが貧困から抜け出す唯一の道と信じ
苦学する青年の日常と家族の姿は、日本人が忘れた大切なもの―
フィリピン人の“Overseas”スピリッツの強さは見る者に勇気を与えてくれる。