創業85年の「いわさき」(大阪市東住吉区)は、飲食店用の食品サンプルのパイオニア。創業者の岩崎瀧三は、リースとレンタルをいいとこ取りした「貸付制度」で日本にサンプル文化を広めた。
それ以来、同社はサンプル業界でトップシェアを記録し続けてきた。ところが、バブル崩壊後、飲食店の食品サンプル離れが進み、会社は危機を迎える。そこで、まず始めたのは、店の繁盛を手伝うサービスの開拓だった。
サンプルは、食べる寸前の「美味しい瞬間」を切り取ったシズル感溢れるものに変わり、さらに客から見えやすいディスプレーも提案。ショーケースの高さに応じてサンプルに角度をつけるなど独特の展示方法を考えたのだ。
これらの新しい提案で、サンプルを置いた7割の店の売り上げが上がったという。しかし、サンプルから写真メニューに変えコスト削減に走った飲食店の契約は、すべて戻ってきたわけではなかった。
いわさきの次なる手は、ハンドメイドの技を武器にした飲食業以外の異業種との連携。関西医科大学、医療関連商社と共同で人体の模型作りを始めたのだ。取り組んだのは、人の血管模型。カテーテル治療の訓練用に動脈や心臓の模型の製作に挑戦したのだ。
ポイントは、3Dプリンターでも実現が難しい血管の中の感触の再現だった。このモデルは、研修医など経験の浅い医者の格好の練習台になり、医学の進歩に大いに貢献した。
本物そっくりの食品サンプルで視覚に訴え、美味しい瞬間を切り取ることで味覚を刺激。さらに、血管内部の手触り感まで再現したいわさきの技は、五感を再現するフェイクまでも作り得たのだ。今後、嗅覚や聴覚に訴えるサンプルにも挑みたいという。
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